先月公開された村上春樹さん原作の映画『ノルウェイの森』を観てきた^^
原作がとても好きなので所々不満点はありますが、全体的には良い映画になっていたと思う。
先ずは不満な所から。
・序盤、直子が語った「古い野井戸」の話がばっさりカット
原作は38歳になったワタナベ君が、20歳の頃の事を回想するという形で始まるんだけど、その時思い出したのが直子が語った「どこかにあるけどどこにあるのか誰にもわからない、落ちたら助かる見込みの無い古い井戸」の話。
井戸は春樹さんのこの頃の作品によく登場し、孤独や喪失感、無力感、心の闇などなどを表す大事なモチーフなのに、この話がばっさりカット。残念
・ラブシーンが特濃
監督がフランスの人だからだろうか。ラブシーンがやたら濃厚でちょっと目と耳のやり場に困ってしまう
原作でも重要な行為として描かれてはいるけど、そこへ至るまでの過程が大事なのに端折られてて、些細なやり取りから唐突にラブシーン突入で戸惑った。
・レイコさんの存在感が希薄
療養所で直子と同室で過ごすレイコさん。直子との絆やレイコさん自身の過去もばっさりカット
原作終盤でワタナベ君と2人で行った直子の「淋しくないお葬式」も無く……。
彼女の過去に何があったのかがまったく描かれていないから、終盤にレイコさんがワタナベ君に言った「お願い」は、原作を読んでいない人には何故こんな事を言うのか理解出来ないんじゃないかと思う。
とはいえ、そこまで描いていたら4時間は越える作品になってしまいそうだけど
満足だった所。
キャスティングは私のイメージに近く、特にワタナベ君を演じた松山ケンイチさんが良かった
優柔不断と紙一重の優しさ、淡々とした語り口、緑といる時の穏やかな表情、直子を失った時の激しい混乱ぶり、全てに惹きつけられた。松山ケンイチさん、ファンになりそう
ワタナベ君は決して魅力的な男性、というわけではないけど映画を観ていて、緑がワタナベ君に惹かれたのが何となく分かる気がした。
直子も緑もそれぞれに強い存在感を放っていて魅力的。直子は原作よりも強く暗い力を感じた。ワタナベ君を見ているようで誰の事も見ていない目つきと、今にも壊れそうな声が特に印象に残った。対して緑は原作同様明るい生命のエネルギーに満ちていて、不幸な境遇を乗り越えていこうとする強さに惹かれる。
風景も綺麗で、特に直子を失ったワタナベ君が荒れた海で悲しい咆哮を上げるシーンは、ワタナベ君の心情と風景が同化して印象深いシーンだった。
直子には「好きだよ」と、緑には「愛してるよ」とワタナベ君は告げる。この違いが、揺れていたワタナベ君の今後の心と人生の行方を表しているんだろうと思った。
不満点も満足した所も、細かい事を上げればキリが無いけど、原作の魅力を大きく損なう事無く、愛や生死、幸福について、考えさせられる良い映画に仕上がっていた。
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