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創作裏話、Web拍手御礼、マイブームなど。
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    村上春樹『1Q84』

    村上春樹さんの5年振りの新作。内容が全く明かされないまま発売、にも関わらず発売12日目にして100万部を超えるという快挙を成し遂げた作品。
    村上さんの力を感じる。

    村上さんいわく「予断を持たずに読んでほしい」という事なので、あらすじや登場人物については触れない事にしておいて。

    久しぶりの村上春樹さんの長編、ページを捲る手が止まらない。独特な村上ワールドは健在で引き込まれる。登場人物の言葉や思考に惹き付けられ揺さぶられ続けた。読み終わると放心状態。
    色々まだ昇華し切れてない所もあるから、まだまだ読み返して物語の世界に浸ってみようと思う。

    万人受けする作品ではないかもしれない、けど村上春樹さんファンなら、ハードカバーで購入してでも読む価値ありだと思う。

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    『葉桜の季節に君を想うということ』 歌野昌午

    第57回日本推理作家協会賞、第4回本格ミステリ大賞など、数々の賞を受賞した歌野昌午さんのミステリー。

    「何でもやってやろう」屋を自称する元私立探偵の成瀬将虎は、同じフィットネスクラブに通う弟分の芹沢清から、彼の想い人・久高愛子の頼みを引き受けて欲しいと相談される。愛子の頼みとは、悪質な霊感商法を行っている「蓬莱倶楽部」という団体の調査だった。彼女の祖父が悪徳商法に引っかかり、多額の保険金をかけられ殺害された疑いがあるという。
    そんな折、将虎は駅で飛び込み自殺を図ろうとした女性・麻宮さくらを助けた。何度か会う内に将虎はさくらに惹かれていくのだが……。

    将虎の蓬莱倶楽部内偵とさくらとの恋愛を中心に、探偵事務所に勤めやくざの内偵をした時の事、かつて将虎と友情を築いた男性の事、不可解で意味ありげな夜の場面、蓬莱倶楽部に関わり悪に堕ちていく女性、様々なシーンが交錯しながら物語が進んでいて、一見、何の関わりがあるのかわからないシーンがどう繋がるのかとページをめくる手が止まらなかった。
    多くの人が騙されたと聞いて「私は騙されないぞ」と構えていたけど、読み始めの数ページから歌野さんの仕掛けた術中に嵌まってしまった。重大なネタバレになるから詳細は書けないけど、伏線の貼り方が巧みで、また読み手に上手く先入観を与えながら所々に違和感を注ぎ、真相が明かされた後にしれっとした顔で「そっちの思い込みだろう?」と言う流れに感服。はい、仰るとおりです。言葉によってそれぞれが受ける印象のあいまいさを上手く突いた作りだと思った。
    ラストのあざといまでにかっこいい将虎の台詞も、過去の体験が活きていてジーンとする。

    タイトルに含まれた意味も温かさや優しさが込められていていい。
    将虎のようなバイタリティに溢れ全てをポジティブにとらえる生き方は、自分には到底出来ない生き方だけど憧れもする。

    胸の悪くなるような事件を通して最後に残ったのは希望、細かいツッコミ所はいくつかあるものの、「まぁ、いいか。」と思わせられる力を持った作品。

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    キャラメルボックス'09サマーツアー『風を継ぐ者』観劇!

    昨日、演劇集団キャラメルボックスのサマーツアー『風を継ぐ者』を観てきた♪
    前から3列目といういい席で殺陣から何から迫力満点!

    元治元年五月。
    足が早い事だけが取り柄の立川迅助と、友人で昌平坂学問所教授を父に持つ小金井兵庫は共に新撰組の入隊試験を受け見事合格した。
    沖田総司率いる一番隊に配属された2人は次第に新撰組に馴染んでいく。
    だが一ヶ月後の池田屋事変で、2人の目の前で沖田は喀血し昏倒してしまう。心配した2人は、沖田を迅助の妹・そのが看護見習いをしている桃山鳩斉の診療所へ連れていき、桃山の娘・つぐみが沖田を診る事になった。沖田は「おなごは苦手だ」と言いつぐみはその言葉に反発するが、2人は次第に惹かれ合っていく。
    その後、迅助達は蛤御門の変に巻き込まれ怪我を負った女性・美弥を助ける。桃山診療所へ案内された美弥は、「自分の夫は池田屋で沖田総司に殺された」と語り……。

    左東広之さん演じる迅助の素直で一途な気持ち、大切な人を守る為救う為に、泣きそうなくしゃくしゃの顔で走り回る姿がとても魅力的で、応援したくなるくらいに惹き付けられる。
    終盤、窮地に陥った状況でも「俺は絶対に逃げません!」と叫んだ姿、そして長州志士達を見据えた眼差しにぞくぞくキラキラ最高にかっこよかった!キラキラ
    そして、畑中智行さんが演じた沖田の、殺陣の時のどこか楽しげで残忍ささえ見える表情や、仲間達に向ける優しく熱い眼差しが沖田総司のイメージにぴったりでめちゃくちゃかっこよくて、中でも武器を奪われ丸腰のまま敵を睨みつける表情に惚れ惚れキラキラ

    元々新撰組が好きなので、彼らに肩入れしながら観てしまうのではないかと思っていたけど、敵対する長州の志士達や、沖田に夫を殺されたと言う美弥、それぞれの気持ちもとても強く伝わってきて、善も悪も無く、ただ熱い想いとそれぞれの正義がだけがあった幕末の時代の空気を感じてジーンとした。
    そして、危険な戦いに身を置く男達を、女達はただ黙って待ち泣くだけではない。命を救う為に学び手を尽くすつぐみ。夫の復讐の為に弟・剣作と共に行動を起こした美弥。その強い想いに惹き付けられた。つぐみの「(沖田は)今殺さなくても病でいずれ死んでしまう」という言葉に対し、「病なんかで死なせない、沖田総司には剣で死んでもらう!」という美弥の言葉に、夫へのただならぬ想いと自分の行動に対する決意の強さを感じて胸が痛んだ。
    その後、総司から託された手紙をつぐみが読み上げるシーンでは、2人の心が確かに通じ合っている事を感じて、それでも結ばれる事は叶わなかった運命が切なくて泣けてしまう:;

    ラストシーンは明治に入った世の中。
    10年の時は様々なわだかまりを解き放ち、剣作と兵庫は行動を共にしている。
    「俺達、みんな生きてて良かったな!」という兵庫の台詞と笑顔にうるうる:;
    戊辰戦争で離れ離れになった兵庫と迅助が再会し、手を振り合う場面では思わず客席から手を振り返したくなった!同じ思いにかられた方は多いのではないかな?

    大切な誰かの為に走り大切な誰かの為だけに生きる、決して自己犠牲の精神ではなくて、誰もが互いに同じ想いを抱えて走り生きている、そんな熱い真っ直ぐな生き様に胸を打たれたキラキラ

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    霧舎巧『名探偵はもういない』

    「読者への挑戦状」付きの霧舎巧さんのミステリー。

    犯罪学者・木岬研吾は小学校4年生の義弟・敬二を連れ、ある目的を持って北関東の小さなペンションを訪れた。バイパスの光峠スカイラインから逸れた場所にあるペンション「すずかけ」。そこには高圧的な中年女性・琴沢を始め一癖も二癖もありそうな人物が集っていた。
    ペンションオーナー・鈴影さゆみと惹かれ合った木岬は、自分に憧れ「将来は犯罪者になる」という敬二のためにも、犯罪学者から名探偵に転身しようと決意するのだが……。
    傲慢な琴沢とある理由から彼女に逆らえない一部の人々、雪に足止めされてすずかけにやって来た謎めいた外国人紳士・リチャード、遅れてやってきたリチャードの息子・エリオット、すずかけの共同経営者・東観寺と複雑な主従関係にある従業員・福永。
    大雪と、翌日の昼に発生したM7の地震によって完全に外界から閉ざされたペンションで、まず琴沢が、そして木岬が遺体となって発見される…。

    外界から隔絶されたペンションに訳アリな人物がぞろぞろ、謎めいた状況で起きた殺人、遺書と怪文書、素人探偵による捜査、そしてすべての手掛かりが揃った時、作者から読者へ出される「挑戦状」。古典本格ミステリー好きにはたまらない要素が満載キラキラ
    そして決してこれらの謎は古典的な探偵小説では終わらない。まず主人公だと思われた人物が遺体となって発見された所に驚かされるえっ
    また、外界からペンションを隔絶したかった理由や、これでもかというほど訳アリな人物が集まっている訳、真相を探るのが警察ではなく素人探偵でなきゃならない理由も、さほど無理なく現代ミステリーに馴染むように描かれててすんなり入り込める。
    伏線が細かく張られてて、複数の遺書とタイプライターで打たれた怪文書、福永の常軌を逸した奇妙な行動、偶発的に起きた地震、そして「名探偵」の存在。重大なネタバレになるんで詳しく触れるのは避けて、今まで手掛かりとして見えていたものが、視点を変えると全く違ったものとして浮かんでくる、推理小説の醍醐味が味わえるキラキラ
    で、解答編で事件の関係者に探偵役が語る真相は、捜査して判明した事から起こり得るすべての可能性の中から、残された者達に都合の良い展開を選択して語られてて、また聞かされている側もそれを分かった上で語られる真相を受け入れている。
    「少しでも心の痛みを癒してくれる筋書きを想い描いて何が悪い。」
    「一言一句間違いのない真実なんて誰も知らなくていい。」
    探偵役の人物のモノローグ、悲しい背景を持ったこの事件に温かい読後感を与えてくれるキラキラ

    そしてこの物語にはもう一つ、木岬とさゆみの恋愛にも謎が仕掛けられている。木岬がすずかけを訪れた目的と、5年前に起きた光峠スカイラインでの事故で両親を亡くしたさゆみ。事故に関する木岬とさゆみの共通の記憶、5年間さゆみの心の支えだったその記憶から2人の恋愛が始まるんだけど、後にその記憶に食い違いがある事がわかる。「騙された」という思いとそれでも捨て切れない木岬への想いに揺れるさゆみだけど、終盤でその食い違いの正体が明らかになる流れと木岬の本当の想い、そして叶わなかった想いにジーンとなった。

    奇をてらった奇抜なトリックがあるわけではなく、作者のちょっとした遊び心と丁寧な仕掛けに満ちたミステリー。タイトルの付け方も上手く、読みやすくてお勧めキラキラ

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    『銀河鉄道の夜』 宮沢賢治

    宮沢賢治童話の最高傑作の一つと言われ、後世の数々の作品のモチーフにもなった物語。

    朝夕の活版所での仕事に明け暮れる少年・ジョバンニは授業に身が入らず、クラスメイトからは漁に出ていて長い間帰らない父の事でからかわれ、疎外された孤独な日々を送っていた。
    星祭りの夜、クラスメイトのザネリにからかわれ、唯一の友人・カムパネルラが気の毒そうにしながらもザネリ達と行動を共にしているのを見て孤独に苛まれたジョバンニは、一人ぼっちで天気輪の丘に上る。夜空を見つめていたジョバンニはいつの間にか銀河を走る鉄道に乗り込んでいた。すぐ傍の席にカムパネルラの姿があり、2人は銀河鉄道で星巡りの旅を楽しみ様々な人と出会う。燈台守、鳥を獲る男、幼い姉弟を連れ黒い服をきちんと着込んだ家庭教師の青年。彼らと語りジョバンニは「ほんとうのさいわい」について思いを巡らせる。そして南十字(サザンクロス)停車場で彼らが皆降りてしまうと、銀河鉄道にはジョバンニとカムパネルラの2人きりになった。「どこまでも一緒に、どこまでも行こう」と誓い合うが、その直後カムパネルラの姿は消えてしまった。泣き叫んだジョバンニは天気輪の丘で目覚める。夜の町を家へ向かうジョバンニは橋の上に人が集まっているのに気が付いた。そしてカムパネルラが、船から落ちたザネリを助けて川に飛び込んだまま見つからないのだと聞かされて……。

    宮沢賢治の作品の中でも特に好きな作品キラキラ
    詩人でもある賢治の、幻想的で美しい言葉や表現にまず惹き付けられるキラキラ
    「私どもも天の川の水の中に棲んでいる」
    「そのきれいな水は、ガラスよりも水素よりも透き通って」
    「すきっとした金いろの円光をいただいて、しずかに永久に立っている」(本文より抜粋)
    賢治の宇宙に対する認識や想い、信仰や幸福、生きることへの想いが込められてた言葉だと思う。
    そして銀河鉄道に乗り込んできた幼い姉弟を連れた黒い服の青年は、「乗っていた船が氷山にぶつかって沈んだ」と語る。有名なタイタニック号の沈没事故をモチーフにしていて、読み手にはこの銀河を走る鉄道がどういう列車なのかを知る手掛かりとなる。ここでの燈台守と青年の会話がとても印象的。
    「ほんとうにどんなにつらいことでもそれがただしいみちを進む中でのできごとなら、峠の上りも下りもみんなほんとうの幸福に近付く一あしずつですから。」
    「ああそうです。ただいちばんのさいわいに至るためにいろいろのかなしみもみんなおぼしめしです。」(本文より抜粋)
    様々な国の言葉での賛美歌が響く沈没時の場面を思い返し「ボートは助かったに違いない」と語る青年に、慰めるように言葉をかける燈台守。南イタリアが物語の舞台である事や書かれた背景なども手伝ってキリスト教色の強い場面だけど、誰の胸にも響く言葉だと感じたキラキラ
    「正しい道」とは何なのか? キリスト教の教えはちょっと置いといて。何が幸せかはわからないし人それぞれではあるけど、「正しい」とは「正解」という事ではなく、自分が「幸せへ繋がっていると信じられる」道じゃないかと思う。その為ならどんな辛い事も糧となって乗り越えて行ける、そんな生きる為のメッセージが込められているように感じた。

    カムパネルラが川に飛び込んで見つからないと聞いたジョバンニは、銀河鉄道は何だったのかをはっきりと感じて、カムパネルラは銀河の外れにいて戻って来ないと悟る。そして、カムパネルラの父親から、ジョバンニの父親がもうじき帰ってくるだろうと聞かされる。
    カムパネルラの死と父の帰還、相反する知らせを同時に受けたジョバンニは、カムパネルラの「どこまでも一緒に行こう」といった言葉を思い返したんじゃないかと思う。父が帰ってくる、母もいる、そしてカムパネルラがいつでも一緒にいる、自分はもう孤独じゃないんだと感じられたんだと思う。
    ジョバンニが銀河鉄道に乗ったのは、孤独感から死への思いがあったからなんじゃないだろうか。ジョバンニ自身は自覚してないだろうけれど。そして、カムパネルラはザネリだけでなく、ジョバンニの事も救ったのではないかと思う。

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